厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)

エイズ予防指針に基づく 対策評価 推進のための研究 HIV Prevention Policy Research

HIV陽性者の介護においての受け入れ課題と対策に関する研究

社会福祉法人武蔵野会リアン文京

山内哲也

目的

地域社会に漸増する要介護のHIV陽性者の受け入れ環境の整備は喫緊の課題である。近年、U=Uのキャンペーンがなされ、HIV/AIDSの理解促進と啓発に有効な情報と推測している。そこでU=Uを活用した介護分野でのHIV陽性者の受け入れ環境の推進を目的として本研究を行う。

方法

研究1:U=Uを含むHIV/AIDSの研修、事後アンケートで効果測定。(継続)研究2:介護従事者・MSWのU=Uにおける意味について質的研究により探索(継続)研究3:高齢者施設の介護職対象としたU=Uの一般的な影響を量的調査(令和7年度)研究4:「HIV/AIDSの正しい知識−知ることからはじめよう−」改定版の製作、配布。(継続)

結果

研究1:U=Uを含むHIV/AIDSの研修の実施 計5回 149名受講 U=Uの周知度が「よく知っている」「だいたい知っている」合わせて13%と低かった。研修受講後のHIV陽性者の受入れは96.6%(自分)、93.3%(自施設)が程度差はあるが受入れ可とした。事後の感想・意見交換では個人での受入れは可能だが組織的対応となると経営側が受けない等の意見があった。また、U=Uについてはポジティブに評価していた。研究2:介護従事者を対象に「従事者にとってU=Uはどのような意味を持つのか」その意義と可能性について半構造化面接で実施(60分)インタビューデータをテーマに関する内容をコード・カテゴリー化。20コード・7サブカテゴリ―・3カテゴリーが構成され、生活文脈・社会生活・受入れ方略に収束し、コアカテゴリーとして【感染ゼロの不確かさから確かさへの手がかり】を抽出した。研究3:高齢者施設の介護職対象とした量的調査計画を策定中(令和7年度実施)研究4:受入れマニュアル「HIV/AIDSの正しい知識」改定中 編集会議、資料収集等を継続

考察・結論

HIV陽性者の受入れ対策として、HIV/エイズの基礎知識の理解と周知が重要である。さらに個人レベルでなく福祉施設の間接業務などの職員を含む構成メンバー全員への知識理解が必要であると思われる。また、U=Uは ①介護現場の感染不安を緩和し、わかりやすく説明力をもち、②従事者は同じ生活文脈の中でHIV陽性者を理解する視野を与え、③U=Uを受入れ方略として検討できることが対象者の語りから示唆された。介護現場の中でICFモデルによる実行機能に着目し、「活動」「参加」の面からポジティブに生きる全体像としてHIV陽性者を捉えなおす視点が重要であることから、U=Uを介護文脈の中で捉えなおす視点を研修プログラム等に反映させることが重要と考える。