HIV感染症に対する偏見・差別に関する研究
大北全俊
目的
本研究は、HIV感染症に関する人権課題の現状と対策の効果を可視化する指標を設定し、継続的なモニタリング体制をデザインすることを目的とする。これにより、人権課題の是正と諸対策の促進を可能とする社会環境の構築を目指す。
方法
本研究は「人権課題の指標設定とモニタリング体制のデザイン」と「医療者対象意識調査(量的調査)」の二つの領域に区別して進める。前者では、UNAIDSのGlobal AIDS Strategy 2021-2026を中心に国際的な指標や関連ポリシーの文献調査を行い、国内外の動向を整理する。後者では、医療者を対象にHIV関連のスティグマや差別に関する意識調査を実施し、医療機関での実態を把握する。
結果
Global AIDS Strategy 2021-2026の指標は「法制度」「ジェンダー規範と身体・性暴力」「スティグマ・差別」の三カテゴリーに分類される。特に、HIV陽性者とキー・ポピュレーションのスティグマ・差別経験に関する指標では、医療機関でのスティグマが重要視されている。先行研究の調査では、医療者を対象とした意識調査の手法として、多職種を含めた医療機関の状況を把握するアプローチが有効であると確認された。
考察・結論
HIV関連の人権課題指標の設定には、国際的な枠組みを参考にしつつ、国内の調査事例との調整を図る必要がある。医療者・医療機関に関する指標設定については、国際的なポリシーで重視されていることも鑑みて、パイロット調査を実施しながら重点的に検討することが求められる。